2022年12月30日金曜日

今年もありがとうございました!

 今年も、皆さまとご一緒に朗読の道を歩くことができて、心弾むうれしい1年でした♬
皆さま、本当にありがとうございました(^^)

「朗読って朗読者の音声表現ですか?」

という問いに対して、何を朗読するのかという前提を無視しないようにと言い続けた1年だったように思います。

音声で聴き手に届く文字列…例えば朗読劇(一人でも複数名でも)の台本やアナウンス原稿を朗読するならば、朗読は、朗読者の音声表現です。

でも、小説は文字で読者に届くもの。音声で届く類いのものではありません。小説の朗読は、〈語り手〉を理解した読者が〈語り手〉を追体験する行為です。小説の朗読では、朗読者は自分の靴を脱いで〈語り手〉の靴を履きます。その意味で、朗読者が自分の靴を履いて行う音声表現とは真逆かもしれません。

小説を豊かに味わう進化系朗読を、皆さまとご一緒したいと願っています。新しい年も一歩一歩前に進んでいきます!皆さま、どうぞよろしくお願いいたします(^^♪

2022年12月23日金曜日

森絵都さんの『こりす物語』【5】(1)〜(13)(『あしたのことば』より)

 秋から森絵都さんの『こりす物語』を大切に読み進めています。今日は【5】に取り組みました。

黙読が一人で取り組む読書なのに対して、朗読は皆で取り組む読書。今日も朗読(朗読をする+朗読を聴く)を通してたくさんの発見があり、〈語り手〉理解が深まりました(^^♪

本当になんて豊かな体験をプレゼントしてくださるんでしょう!皆さんが見せてくれる〈作品世界〉が、私の見ている〈作品世界〉を格段に、膨らませ、厚みを与えてくれます!例えば…

(6)「あまりに、」という最小単位の語りがあることで、読者の、贈呈式の会場を眺める時間が長くなるのですね!だからこそ、はなやかすぎる具体的な景色…会場の着飾った人たちも、ゴージャスなステージも、光も音も、あふれるように目に浮かびました。

(9)「でも、そんなことをこたえたら、「やっぱり、りすはりすだな」と、がっかりされそうです。」「でも」の次の読点をなぜ〈語り手〉は必要だと考えたのか疑問でしたが、朗読を聴かせてもらって納得がいきました。期待している地点から、がっかりしてしまう地点まで、階段を一段ずつ降りていくような心持ちの動きを促されるのです。きっとこれ正解の一つです。

理解が体験を可能にし、体験が理解を深化させるのだと、身体の深いところに刻むことができました。『こりす物語』、いよいよ次回は【6】ですね。ご一緒に〈作品世界〉を旅できて幸せです。心よりありがとうございます(^^)

森絵都さんの『こりす物語』記事:10月9日29日30日

2022年12月20日火曜日

上演台本の朗読 vs 小説の朗読

 先日、上演台本を朗読する機会に恵まれました。私が語り手となって、聞いてくださっている皆さまに、声で物語をお届けしました。少女の一人称で語られるお話でしたので、なんと、少女を追体験した次第です(^^;

もちろん小説を朗読する際にも、〈語り手〉や登場人物が少女ならば、私は少女を追体験いたします。が、小説の朗読で大切なのは、追体験すること自体です。小説の朗読を聴く聴き手も、朗読者の〈語り手〉理解のありようを味わいます。

上演台本の朗読は、語り芸の一つです。語り芸を聴くとき、聴き手は音声そのものを聴いて楽しみますが、文学作品の朗読を聴くとき、聴き手は音声を手がかりにして朗読者と体験を共にします。自分自身の作品世界の体験をより豊かなものにするために。

上演台本と小説の違いをふまえて、それぞれの朗読を愉しめるようになると素敵ですね(^^♪

2022年12月17日土曜日

ありがとうございました(^^)

今日は、銅版画家の長野順子さんと音楽家の大竹広治さんとのコラボステージ『理想夢』公演✨でした♫

お越しくださった皆さま、応援してくださった皆さま、心よりありがとうございました(^^)

うれしい出逢いの中で、幸せな時間が生まれて、感謝の気持ちで胸がいっぱいです!

長野順子さんの個展ー樹木幻想綺譚ーは、19日(月)まで開催されています。千種の5/Rホールで素晴らしい作品とぜひ出逢ってくださいませ(^^♪

2022年12月11日日曜日

『理想夢』公演 2022年12月17日✨今週の土曜日❗️

急な ご案内でごめんなさい🙏

今週土曜日14時〜15時、千種の5/Rホールにて、銅版画家・長野順子さん、音楽家・大竹広治さん、朗読家・石田麻利子のコラボステージがあります(^^)

物語を朗読しますが、物語は、大竹さんの原作を、私が朗読台本化したものです。

楽しんでいただけるように張り切っています!ぜひ、5/Rホールにお電話またはメールでご予約くださいませ。お待ちしております(^^♪

[5/Rホール ☎︎(11時〜19時・水曜休み)052 78 44 888 ]

2022年11月30日水曜日

林真理子さんの『成熟スイッチ』

林真理子さんの『成熟スイッチ』を楽しく拝読しました。この本の中で、第三者の視点で書く小説について、以下のようなことを語っていらっしゃいます。

【一人称とは違って、俯瞰するカメラが必要になり、そのカメラをどこに据えるか?どのような順番でカメラの位置を変えていくか?プロとしてのテクニックがいっそう求められる。】

私たち朗読者は、例えば…芥川龍之介の小説を読むとき、考え抜かれたカメラワークの素晴らしさに、ただただ感動します。「ああ、だからここで読点なのですね!ここで棒線なのですね!」等々と心震わせながら、〈語り手〉の深い企図を汲み取っていきます。朗読という読書の愉悦…

林真理子さんの言葉を伺って、真理子さんの三人称小説もぜひ朗読してみたいと思いました(^^)

2022年11月13日日曜日

朗読家の朗読 (^^♪

さまざまなアナウンサーや俳優の方と、朗読&音楽のコラボレーションをしている音楽家の方が、「麻利子さんの朗読は他の人とは違う」と、首を傾げておっしゃいます。

もちろん違うでしょう。なぜなら…
アナウンサーの方は【伝達行為】として、俳優さんは【表現行為】として、文学作品を朗読しがちだからです。そういうご職業なのだから仕方がないのかもしれませんね…
私は朗読家ですから、文学作品の〈語り手〉を追体験します。ただただ〈語り手〉に、私の身体を提供することに徹します。その結果として生まれる朗読が、アナウンサーや俳優の朗読と違うのは、当たり前です。

アナウンス朗読や表現朗読をしていては、作品理解を深めることはできません。自分の靴を履いたままでは、他者である〈語り手〉を理解することも、追体験することも難しい。
自分の靴を脱いで、他者である〈語り手〉の靴を履くのは、最初は簡単ではありません。でも、文学作品を朗読する際には必須の技術です。私には、貴方がこの技術を身につけるお手伝いができます。なぜって…私は朗読家ですから、ね (^^)

2022年11月1日火曜日

小説のこと

 映画に絵があって音があるように、小説にも絵があって音があります。匂いもあります。もっともっといろいろあります(^^♪

言葉で創り上げられた虚構世界の小説は、作者が自身の[脳内イメージ]を反映させたもの。さまざまな形で読者の五感を刺激します。
優れた作者は、豊かな[脳内イメージ]を、自身の[言語表現]と一致させることができるのでしょう。[脳内イメージ]と[言語表現]とは、1枚のコインの裏表のように分離させることができない関係にあるのですね。

私たち読者が、小説という[言語表現]、すなわち私たちの眼前に並ぶ文字列をしっかり享受できたならば、作者の[脳内イメージ]を、そのままではなくともかなり近い状態で、自分の脳内に創り上げることができます。
でも、自分の靴を履いたままでは、なかなか、簡単ではありません。

では、優れた小説を深く豊かに味わうためにはどうすればいいか?

自分の靴を脱いで、〈語り手〉の靴を履いて、〈作品世界〉を体験できるといいですね。
私は朗読家ですから、大好きな朗読を通して、文学を深く味わうお手伝いをします。受け継がれてきた宝物の文学は、私たちの人生をすこぶる豊かにしてくれます。日本の財産を、次世代へとしっかり手渡していけますように(^^)

2022年10月30日日曜日

森絵都さんの『こりす物語』【1】追記:朗読のための〈語り手〉理解

 朗読の場では、皆で、一つの作品に取り組むことができます。一人では行けないところまで、グンと作品理解が深まります。うれしいですね(^^)

『こりす物語』【1】⑧に、「むねをおどらせるこりすに、上のほうから、ことりたちがききました。」という文があります。

Hさまの朗読で「上のほうから」という言葉を聴いて、上のほうを見上げる感覚を持てて、とてもうれしかった!続く台詞も、上から下へ、下から上へ、の方向を伴っていましたね。森のなか、こりすの隣で〈作品世界〉を愉しむことができました(^^♪
さて、ある方が「小鳥は、上のほうから下のほうの枝へ降りてきて、距離を縮めてこりすに声をかけたと思う」とおっしゃったので、「語り手は、そのようには語っていませんね」とお話しました。どうも小鳥のいる枝があまり上のほうだと都合が悪いと思っていらっしゃるようで、[このくらいの高さ]という、その方なりに高さを決定したご様子でした。解釈して楽になりたいという思いなのでしょうね。「上のほう」という〈語り手〉の語りからは、その高さについては、読者にまかせてもらえるとお話しましたが…

たとえば「上のほうから」を、すごく高いところだと仮定してみると…いかがですか?
「むねをおどらせるこりすに、上のほうから、ことりたちがききました。」
という文に続く、小鳥とこりすの会話シーンの映像が大きく変わりませんか♫
当たり前のように思い描いていた、木の枝に小鳥がいて、その下の地面にこりすがいるというロングショットの映像が、小鳥もこりすも認識できないくらいの超ロングショットの映像に変わる!そうすると、こりすと小鳥という限定が外れて、言葉そのものが、ぐんと力を増すのを感じます。
「写すのよ。この森にあるもの、はしからはしまで、なーんでもね。」というこりすのうきうきした声に、「(書き)写すのよ。この世界にあるもの、はしからはしまで、なーんでもね。」という物語作者の声が、重なって聞こえてくるようですね(^^)

「小鳥の声がこりすに届く距離だから、このぐらいの高さが妥当だわ」というふうに、自分の靴を履いたまま、自分の見たい景色を見てしまいがちだけれど…。自分の靴を脱げると、〈語り手〉理解が深まり、〈作品世界〉が豊かになります。皆さまとご一緒する朗読の場で、いろいろな刺激をいただきます。そして、たくさんの発見が生まれます。感謝です‼️

2022年10月29日土曜日

森絵都さんの『こりす物語』【1】⑤〜⑨:朗読のための〈語り手〉理解

 【1】の⑤で、〈語り手〉は、「願った」ではなく、「願いつづけた」と語ります。その時間の長さが、思いついた喜びと繋がるのですね。「あるとき」、「いいこと」、「そうだわ」の4拍音が、とても心地良いリズムを刻んでくれるのを感じます。

⑥は、④同様〈語り手〉について気になるところ。この〈語り手〉は、「じぶんの見たものを、ことばにするのがとくいでは」ないこりすを、「不器用なこりす」と呼びます。「手さきは器用」であるのに…です。この捉え方は、この〈語り手〉ならではの感性なのかしら?

⑥の「やるだけやってみましょう」から、⑦⑧⑨へと、前向きな、積極的なこりすが目に浮かびます。例えば…、⑦の「ぎゅっぎゅ」は、「ぎゅっぎゅっ」よりも、汁を搾り出す手の力強さを感じますね。そして、最後の一滴まで搾り出す感じも受けます。この〈語り手〉は、こりすの手の動きをクローズアップで読者に見せて、こりすの本気度を感じさせようとするのかな?こりすの人柄ならぬリス柄を感じさせようとするのかな?…こういった朗読者の考えていることが、すべて朗読した際、音に変わるのですね。浅い考えで文字を読み上げていては、厚みのある音にはなりませんね(^^)

2022年10月21日金曜日

アクティブ・ラーニング

 「えっ、そこまで考えるんですか?!」と驚く方がいらっしゃるけれど、そこまで考えるのが朗読で、そこまで考えるから朗読…なのでしょう(^^)

今日は、中京大学の学生さんたちのアクティブラーニング活動のお手伝いです。熱田高校で、茨木のり子さんの「わたしが一番きれいだったとき」を皆で味わうイベント。

[小説や詩の朗読を、【表現】ではなく【体験】だと捉えることで、作品理解はぐんと深まる]

という体験を、ご一緒に楽しめればと思っています。素晴らしい学生さんたちと出会えて、豊かな時間を共有できて、とても幸せな秋です(^^♪

2022年10月9日日曜日

森絵都さんの『こりす物語』【1】①〜④:朗読のための〈語り手〉理解

10月期は、森絵都さんの『こりす物語』を読んでいきます。児童文学のジャンルですが、いろいろ考えさせてくれる豊かな作品だと思って取り上げました。

大きく6つの章【1】〜【6】に分かれています。今日進んだのは【1】の形式段落④まで。次回KさまとMさまに朗読していただいたあと、⑤〜⑨へと読み進めてまいりましょう(^^)

【1】の冒頭で〈語り手〉は読者を森へと誘います。こりすの暮らす森です。〈語り手〉は、こりすがどれほどちいさいかを念入りに語ります。ですから私たち読者が、脳内に広がる作品世界で出会うのは、本当にちいさなこりす。「だいぶちがっていた」という〈語り手〉の語りが説得力を持ちますね。
②の「ものすごく大きくてりっぱ」「森の王さま」と発話するのはこりすですね。どのような表情から生まれる言葉なのか…こりすの表情をしっかりイメージしてください。もちろん野うさぎやシカの表情も。
〈語り手〉は、抽象化と具体化を繰り返して、③のこりすの発話を読者に聞かせます。こりすの表情が変化していくのが見えますか?こりすが「わたしの見ているもの」と語るとき、こりすの脳内には素晴らしいモノが見えているのでしょう。「じんじんするくらい」という発話は、どのような身体から生まれているのでしょう?私の中からは「じんじんするくらい」という言葉はなかなか出てきません。「じんじんするくらい、すてきな瞬間」って?!ワクワクしますね!
④の一行、「その素敵な瞬間を、どうか、みんなにも見てほしい。」は、こりすに言わせるのではなく〈語り手〉自身が語ります。なぜだろう?問いが生まれますね。ひょっとしたらこの「みんな」には、森の動物だけではなく私たち読者も含まれるのかしら…。こりすの願いは、じつは〈語り手〉の願い、〈語り手〉の向こうにいる作者の願いなのだろうな……

皆さまとご一緒する朗読教室で、〈語り手〉理解がどんどん深まっていきます。楽しくて、刺激的で、じんじんするくらい素敵な時空間に感謝です❣️さぁ、こりすちゃんの大冒険をドキドキしながら辿ってまいりましょう(^^♪

2022年9月26日月曜日

進化系朗読

YouTubeの番組『日経テレ東大学』に、羽田圭介さんがゲスト出演された昨日9月25日の回、それぞれのお話にとても共感しました。皆さまもぜひご覧くださいね。
私たちが取り組んでいる心に響く朗読は、イェール大学 成田先生の発言にある【進化系朗読コンテンツ】ですね!
以下、番組案内を転記します(^^)
何を問題とするか?何を問うか?
今回は芥川賞作家 羽田圭介が参戦!
作家のリアル…金銭事情を赤裸々告白!
▼小説家はコスパの悪い報われない仕事?
▼バス旅の反省
▼なぜ小説を書き続けるのか?
▼“言葉”の持つ力と可能性
▼国語教育のあるべき姿とは?
小説の魅力を語り尽くす!文学でワクワクする雑談!

2022年9月20日火曜日

誰の言葉?言語主体は誰?

文字言語と音声言語の繋がり方は多様ですね。音声言語になって完成する文字言語もあれば、すでに完成している文字言語もあって…。二分されているというより、グラデーションになっている感じがします。

アナウンス原稿・お芝居や語り芸の台本などの文字言語は、音声言語となって完成するものの代表です。音声言語として聞き手や観客に届きます。
一方で文学作品、優れた小説等の文字言語は、立派な完成品といえます。文字言語として読者に届くものです。

朗読者である私の意識のありようは、どのような文字言語を朗読するかによってずいぶん変わります。
私自身が言語主体となる場合には、「どのように音声表現しようか?」という問いが生まれますが、言語主体になれない場合には、「言語主体の〈語り手〉はどのように表現しているのだろうか?」という問いの答えを探し続けることになります。

朗読教室を始めた2001年当時は、朗読は音声表現だと思い込んでいて、目の前に並ぶ文字列がどのような文字言語なのか考えることもなく、文学作品を朗読する際にも、「さあ、朗読者の私たちが音声表現しましょう!」と受講者の皆さまにお話ししていたかもしれません…。残念ながら、そのような取り組み方では「心に響く朗読」は生まれません。言語の主体に寄り添えていないのですから。

現在の「心に響く朗読」教室は、数百名もの受講者の皆さまとともに、時間とエネルギーをかけて地道に創り育ててきた、かけがえのない大切なクラスです。クラスの皆さまお一人お一人が、他者理解を大切にしながら脳をバージョンアップして、長い人生を豊かに楽しんでくださることを願いながら小さな一歩を重ねて前に進んでいます。
朗読の道を共に歩いてくださるたくさんの素敵な皆さまに感謝して、今日からまた清々しい気持ちで精進してまいります(^^♪

2022年9月2日金曜日

宮沢賢治『いちょうの実』

私たちは小説や物語を読むとき、 “想像して考える” “考えて想像する” を繰り返しています。
〈語り手〉はいったいどのような景色(作品世界)を読者に体験させたいと思って語ってくれているのだろう…?

9月27日(火)の午後、豊田で宮沢賢治の『いちょうの実』を読みます。以下に冒頭の部分を書き写しますね。

「そらのてっぺんなんか冷たくて冷たくてまるでカチカチの灼きをかけた鋼です。
そして星がいっぱいです。けれども東の空はもう優しい桔梗の花びらのようにあやしい底光りをはじめました。
その明け方の空の下、ひるの鳥でも行かない高い所を鋭い霜のかけらが風に流されてサラサラサラサラ南の方へ飛んで行きました。
実にその微かな音が丘の上の一本いちょうの木に聞こえるくらい澄み切った明け方です。」

〈語り手〉が、読者の脳内に創り上げようとする明け方は、なんて壮大な、そして繊細な世界なのでしょう…
この後に主人公たちが登場しドラマが始まるわけですが、冒頭のこの部分だけでも、賢治のイメージの豊かさにうっとりしてしまいます。
たくさんの皆さまと賢治の作品世界をご一緒できますように☆彡

お問い合わせ:豊田中日文化センター【TEL 0120-98-2841】

2022年8月18日木曜日

自分の読みたいように読まない

自分の読みたいように小説を読むのではなく、〈語り手〉の促すように読んで、〈作品世界〉を体験したとき、〈語り手〉という他者の立場で世界を認識するという【新しい体験✨】ができています(^^)

新しい体験が、脳を進化させてくれます。視野が広がるとも、人として成熟するともいえますね。
脳は100歳になっても進化し続ける稀有な臓器。どんどん新しい体験をして、バージョンアップを図りましょう!

小説を自分の音声表現のための台本にするのではなく、朗読を活用して〈語り手〉を深く理解し、新しい体験を愉しむことが大切ですね(^^♪

2022年8月4日木曜日

言葉を大切にしたくて✨

言葉を大切にしたいと考えています。それは、その言葉を発した人=言語の主体を大切にすること。

言葉によって、読者の脳内に作品世界を創り上げ文学体験を誘うのが小説です。文字言語で読者に語るのが、小説の〈語り手〉です。音声言語では語りません。ですから小説を、音声言語で届けようとするのは、文字言語の主体である〈語り手〉を蔑ろにする行為だと自覚せねばなりません。音声では届けられないのが小説なのです。

朗読するとは、〈語り手〉を追体験する行為です。

何のために朗読するのか?

それは、頭のみならず身体を使うことで〈語り手〉理解をさらに深めるため。それと同時に、自分の頭の中にある、自分が鮮やかに体験している虚構の〈作品世界〉を、朗読を聴く読者に開示するためです。

朗読を聴いて生まれるさまざまな共感や違和感は、作品理解を深める話し合いを私たちに促してくれます。朗読のある読書の場は、とてもとても豊かです(^^)

小説は上演台本ではありません。言語の主体である〈語り手〉に敬意を持つことから、朗読はスタートします✨

芥川龍之介『トロッコ』

朗読教室で、芥川龍之介の『トロッコ』を取り上げています。読めば読むほど…読み深めるほど、芥川の凄さを感じる素晴らしい作品です✨

朗読することで、すなわち8歳の良平を間近で見守りながら語る〈語り手〉を追体験することで、この〈語り手〉が読者に届けようとしている財産を受け取ることができます。

人生山あり谷ありだけれど、それらを乗り越えてきて、現在ここに自分がいる。心細い思いが心に過るのは誰だって同じ。与えられた人生のゴールに向かって前に進んでいこう…。芥川が寄り添ってくれるのを感じます(^^)

芥川龍之介の『トロッコ』。さまざまな気づきを与えてくださった朗読教室の皆さまに、心から感謝します。皆さま、ありがとうございます!

2022年7月13日水曜日

朗読教室の皆さま✨ありがとうございます✨

朗読する(=〈語り手〉を追体験する行為)ことはゴールではありませんし、朗読を聴くことも聴いておしまいではありません。目的を取り違えないようにしましょう。

朗読の目的は、〈語り手〉理解をさらに深化させて、〈作品世界〉を豊かに体験することです。

朗読者という朗読する読者は、自分の虚構体験(=脳内の〈作品世界〉)を開示します。それは、朗読を聴く読者の虚構体験を刺激します。そこで両者の間に交わされるものは、互いの〈語り手〉理解をぐんぐん深めてくれます(^^♪

朗読教室では、〈語り手〉という他者を理解しようとして、活発な言語活動が生まれています。脳は新しい体験をさぞ喜んでいることでしょう。他者理解を深める場は、大人として成熟していく場です。厳しいようですが、承認欲求を満たすだけの場ではないと考えています。探究心をもって、小説を豊かに読もうとする皆さまと過ごせる時間に、心から感謝しています。皆さま✨ありがとうございます(*^^*)

2022年7月3日日曜日

豊潤な朗読文化を✨

アナウンス原稿や教養書・実用書etcと文学作品とでは、そもそも目的が違います。前者は事実や知識を伝えようとしますし、後者は経験それ自体を伝えようとしています。

『本当の朗読』という言葉の入ったタイトルに惹かれて読んだ本の中に、芥川龍之介の小説に関する記述がありました。「芥川は、読点の付け方が正確ではなく、その通りに朗読すると伝わりにくい。わかりやすく伝えるために、読点の位置を付け替えなさい。 読点を省きなさい」というような内容でした。芥川の文学を、アナウンス原稿と同じように扱っていますね。何も疑わずに「これが本当の朗読なのだな」と鵜呑みにする方が、いらっしゃらないとも限らない…(・・;) 
この本で語られているのは、『本当の朗読』ではなく『アナウンス』のように感じます。
芥川が伝えようとしているのは体験です。まさに読点通りの息遣いです。身体であり心情です。読点を大事に考えることから、芥川作品の受容は深まっていくと思います(^^)

話を戻します。経験を伝えようとしている文学作品は、「体験する」という読み方を待っています。表面だけ、字面だけを追っていては体験になりません。時間をかけて言葉に深くコミットすることが大切です。それでも、経験値を超えるコミットメントはなかなか難しい…。自分だけで読んでいては、そう簡単には超えられません。もし他者の体験に接する機会を持てたならば、刺激を受けたり、気づきが生まれたりして、さらに豊かな体験ができますね!

朗読には、聴き手の読書をより豊かな体験へと導く力があります✨前近代を引き摺ったままの朗読(上手なわかりやすい読み上げ行為)を超えて、ご一緒に豊潤な朗読文化を育んでまいりましょう(^^♪

2022年6月11日土曜日

朗読者の心構え✨

[朗読する]とは声を出して[文字列]を読む行為です。

[文字列]の中には、音声言語で届くことを前提に書かれたものもあれば、そのまま文字言語で届くことを前提に書かれたものもあります。

戯曲、朗読劇の台本、アナウンス原稿は前者。このような文字列の朗読では、朗読者が言語の主体=音声表現者です。どのように表現したら聞いている人は惹きつけられるかしら?どのように表現したら聞いている人にわかりやすく届くかしら?等々、音声表現を磨いたり楽しんだりすればいいですね。

ん⁉️これって、語り芸やアナウンスの行為と何が違うのでしょうか?
[朗読]ではなく、[語り芸]や[アナウンス]って呼べば良いのではないか…と思えてきます。

さて、小説は後者です(ここで小説って何かという問題が出てきますが、何度読んでも新しい発見をさせてくれるものと考えておきます)。小説の朗読では、文字言語の主体は、あくまでも作品世界内の〈語り手〉です。朗読者は言語の主体ではありません。朗読者は音声表現者ではないのです。〈語り手〉を追体験する行為そのものを楽しみましょう(^^)

繰り返しますが、[小説を朗読する]とは、他者である〈語り手〉を追体験する行為です。〈語り手〉を理解することで、追体験が可能になります。〈語り手〉の「語り」をしっかり観察しましょう。観察を重ねることで理解は深化します。安易に解釈することをやめて、理解を深める練習をしましょう。横道に逸れていたら呼び戻しますから、安心して〈語り手〉理解にチャレンジしてくださいね(*^^*)

小説の朗読は、[体験行為]を楽しむ✨ものです。そう確信したときに、結果として、心に響く朗読・心を揺さぶる朗読がついてきます。
目的を取り違えないようにいたしましょう。
〈語り手〉を深く理解することと、〈語り手〉を追体験することを、ご一緒に楽しめますように✨✨

2022年6月2日木曜日

ありがとうございました(^^)

山田はるかさんの講演会『人形操演の世界』✨たくさんの皆さまにご受講いただきました。

山田はるかさんの熱い思いがあふれたたいへん濃密な時間でした。皆さまの柔らかな優しい表情が、いまも目に浮かびます…

ご参加くださった皆さま、お世話くださった皆さま、心よりありがとうございました✨
山田はるかさんのさらなるご活躍が楽しみでなりません(^^♪

2022年5月28日土曜日

山田はるかさん✨

いよいよ明日(5月29日)は、NHKカルチャー名古屋教室で【山田はるかさんの講演会】です。嬉しいことに聞き手を務めさせていただきます(^^)

人形操演の世界✨は初体験です。この度、昨年ご出演された『プロフェッショナル』を拝見して、小説の朗読と同じだと感激しました。
山田さんは、エンパシーで(=自分の靴を脱いで人形の靴を履いて)人形を深く理解して、その身体を現象させていらっしゃるのだな…と。
私たち小説の朗読者も、エンパシーで(=自分の靴を脱いで語り手の靴を履いて)語り手を深く理解して、その身体を現象させます。

浅いレベルでの安易な「私はこう思う」「私はこう考える」という解釈をいかに踏みとどまって、どこまで他者を他者として理解しようとできるのか。知性と感性が鍛えられます。面白くて、楽しくて、やりがいがあります(^^♪

山田はるかさんの「細胞レベルで人形が好き」という熱い思いに直接触れることのできる貴重な機会。明日、5月29日 日曜日 13時30分〜スズケン市民講座「人形操演の世界」。お待ちしています!

2022年5月18日水曜日

NHKカルチャー 青山の朗読講座が始まりました(^^)

今日からNHKカルチャー青山教室での講座が始まりました。

脳を創り、身体も奏でる…盛りだくさんの楽しい時間をご一緒いただきました。誠にありがとうございました(^^)

【小説を読む=虚構の作品世界を体験する】

皆さまと豊かな体験ができること、嬉しくて楽しくて!
愛知でも岐阜でも東京でも、素敵な皆さまとの朗読レッスンに胸が弾みます!皆さま、心よりありがとうございます✨

2022年5月7日土曜日

小説を読むとは…

 小説を読むとは、文章を解釈したり、作者を解釈したりすることではありません。
〈解釈する〉とは、わかった気になるための行為です。わかった気になるから、探究を怠ってしまうのです。

わかった気になって探究を怠る。これほど愚かなことはない。by チェーザレ(惣領冬実 先生)

でしたよね。解釈せずに、探究いたしましょう。
言語の理解を深めて、作品世界を豊かに体験すること。これが、小説を読むということなのでしょう。

小説を読むことで、私たちは新しい体験ができます。新しい体験が、新しい自分を創ってくれます✨
ステキな小説を愉しんで、いつも、いつまでも、瑞々しいあなたでいてください(^^)

2022年5月3日火曜日

読書で育むコミュニケーション能力

GW🍀皆さま、楽しくお過ごしでしょうか✨

小説をテキストとする読書行為とコミュニケーションについてまとめようと、一日中原稿用紙と向き合う日々が続いています(^^;

人は成長するにしたがって、絵本から物語、物語から小説へと、手にとる本を変えていきます。

まず絵本を読むことで世界と親しみ、物語を読むことでシンパシーを覚え、そして大人になると…小説を読むことでエンパシーの能力を育むのでしょう。

シンパシーと呼ばれる共感の思いは自ずと湧いてきますが、自分の靴を脱いで他者の靴を履くエンパシーの能力は、意識して育てなければなりません。意識して磨かなければ錆びていきます。

小説を自己化せず読めるように、語り手を真っ直ぐに見て対話を重ねて、エンパシーの能力を育てていくことが大切だと思っています。虚構の世界で培った能力は、現実世界でのコミュニケーションに大いに役立つはずです(^^)

2022年4月4日月曜日

あっという間に4月4日

春ですね🌸あっという間に4月になったと思っているうちに、もう4日経ってしまいました。早い早い!
今年度もどうぞ宜しくお願いいたします(^^)

新しい朗読クラスのご案内です。4月1日からNHKカルチャー名古屋教室で入門クラスがスタートしました。5月からはNHKカルチャー青山教室で月に一度、全5回の朗読ワークショップが始まります。

文学作品の朗読を通して得られる豊かな体験を、人生の糧にしていただきたいと思っています。健やかな笑顔で、心弾む毎日を、積み重ねてまいりましょう✨皆さまの美しい人生を全力で応援します(^^♪

2022年3月30日水曜日

惣領冬実先生の講演会にご参加いただき誠にありがとうございました✨

昨日は、『チェーザレ 破壊の創造者』完結記念の惣領冬実先生 講演会にたくさんの皆さまがご参加くださいました。誠にありがとうございました✨
膨大な資料を読み解くところから凄まじいエネルギーを注ぎ、稀有な想像力の美翼を広げ、13巻を紡いでくださった惣領冬実先生の素晴らしさに圧倒された幸せな時間でした(^^)
時間内にご紹介しきれなかった(ごめんなさい!)メッセージ・ご質問は、プリントアウトしたものを、担当の方が惣領冬実先生にお渡しくださいました。
ご講演くださった惣領冬実先生、ご参加くださった皆さま、支えてくださった全ての皆さまに心よりお礼申し上げます。ありがとうございました!

2022年3月16日水曜日

NHKカルチャー青山教室 『チェーザレ 破壊の創造者』完結記念講演会

惣領冬実先生を講師に招いた講演会「『チェーザレ 破壊の創造者』完結記念  私のチェーザレ・ボルジア」が、3月29日(火)13時30分〜NHKカルチャー青山教室で開催されます。聞き手としてお手伝いさせていただきます。

全13巻106話、惣領冬実先生のチェーザレと出逢えた喜びに胸が震えます。まだお読みでない方にはぜひ手に取っていただきたい【漫画】です。

いつもは小説や詩と向き合い、その文字列を手がかりにして、自分の頭の中に作品世界を創り出すことを試みています。が、今回は、作品世界が漫画というかたちで目の前に与えられています。なんとも新鮮です!そして、惣領冬実先生の生み出す作品世界の美しいことといったら!!

チェーザレ・ボルジアは中世に実在した人物。この作品は、史実に基づくフィクションだそうです。いったいどれほどの時間とエネルギーがこの作品のために注がれたのか…。この凄い作品を読めることにただただ感謝しています。惣領冬実先生、ありがとうございます✨

惣領冬実先生の講演会、たくさんの皆さまのご参加をお待ちしております。お問い合わせは、NHKカルチャー青山教室(電話03 3475 1151)まで宜しくお願いいたします(^^)

2022年3月8日火曜日

ありがとうございました✨

文学賞味会2022が終了いたしました。

ご参加くださった皆さま、お気にかけてくださった皆さま、お力を貸してくださったすべての皆さまに、深く感謝申し上げます。心よりありがとうございました。

優れた小説は、どこまでも豊かです。
もう数え切れないほど『おきなぐさ』を読んでいますが、心弾む新しい発見は尽きません。

朗読は、小説を味わう一つの手段になれると思っています。昨日ご参加くださった皆さまが『おきなぐさ』という作品を大事にしてくださると嬉しくて幸せです(^^)

2022年3月6日日曜日

文学賞味会2022 皆で賢治の世界を歩く(^^♪

 朗読で小説を届けることはできません。
小説は文字で届くものです。読者は文字列を手がかりにして、作者が言葉だけで創り上げたフィクションの世界を、自分の脳内に創り出して個人の体験を愉しみます。
朗読者は、朗読で小説を届けることはできませんが、朗読を通して、自分の体験を他者に晒すことができます。
朗読を手がかりにして、ぜひ私の『おきなぐさ』体験に触れてください。私の体験はあなたの体験をどのように揺さぶるのでしょう…?
『おきなぐさ』の世界を皆さまとご一緒に豊かに味わうことを目指します(^^)

2022年3月5日土曜日

月曜日✨原稿コピー10枚お忘れなく〜(^^)

 読めば読むほどに思います。

宮沢賢治は本当によく頑張って(⁈)素晴らしい作品を残してくれました✨

次に頑張るのは、読者の私たちですね!!

作品世界を受け取り体験できるようにご一緒に頑張りましょう。もちろんリラックスして愉しみながら…ですね(^^♪

月曜日、皆さまとご一緒に『おきなぐさ』の世界を辿る時間を心待ちにしております(^^)

2022年2月17日木曜日

理解する。受容する。

「私の解釈では…」と語り始めるのは、ある程度は理解できたと思えた後、もしくは理解しようと懸命に努めた後にいたしましょう(^^♪

語り手に寄り添いましたか?語り手を体験しようと努めましたか?

もっと寄り添えるのではありませんか?もっと体験できるのではありませんか?

そう自分自身に問いかける毎日です(^^)

2022年2月11日金曜日

宮沢賢治『おきなぐさ』

小説には、物語る[語り手]が必要です。通常、作者の創り出す[語り手]は[作者]と同一ではありませんが、宮沢賢治の『おきなぐさ』に関しては、語り手は作者の宮沢賢治だと思われてなりません。

この作品の主役は、二輪のうずのしゅげ(学名・おきなぐさ)です。彼らの姿には、ともに生きて、ともに心を震わせたであろう賢治と妹トシの姿が重なります。風に乗って旅立った彼らを一番近くで見送ったひばりも、きっと賢治の分身なのでしょう。そして、岩手の豊かな自然のなかで繰り広げられたこの繊細なドラマを見届け、さらに、うずのしゅげの魂に安住の場所を与えた語り手も、もちろん賢治。
彼はこの作品を創作することで、最愛の妹の死をようやく受け入れることができたのかもしれません。

『おきなぐさ』の読書体験は、身を裂かれるような悲痛な別れを、宝石のように輝き続ける美しい思い出に変えてくれると確信しています。例えば…正確な情報を読者にわかりやすく届けようと書かれた新聞の文章を読むときと同じように『おきなぐさ』を読んでいては、読書体験にはなりません。観察力や洞察力、想像力を使って作品理解に努めることで、読書はかけがえのない体験になります✨朗読教室ならびに文学賞味会で、『おきなぐさ』の読書をさらにダイナミックな体験にするお手伝いができたら幸せです。
言葉が創り出す豊かな世界をご一緒に愉しみましょう(^^♪

文学賞味会で宮沢賢治『おきなぐさ』の読書を楽しみましょう!

 文学作品を豊かに味わうための《文学賞味会》。

一人ではなかなかたどり着けない[深い作品理解]へと至る道のりは、文学博士の高田映介がご一緒します。宗川諭理夫の作曲・演奏による音楽と石田麻利子の朗読は、よりダイナミックな読書体験へとあなたを誘います。

一つ一つのシーンで、それぞれの景色が鮮やかに立ち現れる。登場人物たちが眼前で躍動する。彼らの繊細な心の動きが手にとるように伝わってくる。読書の感動を分かち合いましょう。

今年は、3月7日月曜日18時から千種の5/Rホールにて開催します(^^♪

2022年2月4日金曜日

宮沢賢治『おきなぐさ』 文学賞味会に向けて✨続き

小説の語り手は、読者に〈新たな体験〉を促してくれます。言葉だけで創り出される各シーンで、私たちは目撃体験を大いに楽しみましょう(^^♪

さて、「おきなぐさ」の山男シーン直前の語り手の発話「よろしい。さよなら。気をつけておいで。」の途中…さよならを言い終えた辺りで、語り手は、去って行く蟻を目で追いながら立ち上がり、無事を祈る声がけをしたのでしょう。蟻の進む方をしばし見ていた立ち姿の語り手は、ゆっくりと頭を回して、その目線の先を見るようにと読者に促してくれます。黒いひのきの森が、私たちにも見えてきました。上空からのカメラワークに切り替わることで空き地が見つかります。降りていくと、誰かいる。賢治の創り出すデクノボウ的存在・山男です。あたたかな陽射しを受けています。倒れた木にいつものようにリラックスして座っています。仕留めた鳥を食べようと手で引き裂いた、その状態でフリーズしている。山男の見ているものは何か?彼の眼玉が向いている方を見るよう語り手から促された私たち読者は、1本のうずのしゅげを発見できるのですね!うずのしゅげの花のアップから、最後はロングショットへと切り替わります。早春の光が差す、ひのきの木が周りを取り囲んでいる枯れ草の空き地に存在する[大柄などっしりとした山男]と[風にそよぐ可憐なうずのしゅげの花〕との対比が、このシーンをより印象に残るほのぼのとしたものにしてくれますね。山男の目も釘付けになるほど、うずのしゅげの花がかわいく魅力的なことを私たち読者は納得して、いよいよ始まるドラマの本編へと読み進めていくのですね(^^)

2022年2月1日火曜日

宮沢賢治『おきなぐさ』 文学賞味会に向けて✨

 前回のブログで、『おきなぐさ』の予習をお願いしました。『おきなぐさ』もですが、小説を読むときには、それぞれのシーンを、その場へ行って体験するつもりで読むと楽しいと思います✨
あらすじがわかればOKという読み方では、作品の楽しさ・面白さをじゅうぶんに味わえなくて…もったいないです(^^)

さて、『おきなぐさ』という作品を大きく分けると5つ。

①読者を、日常からあちらの世界に連れて行く導入部分

②花も蟻も山男もみんなうずのしゅげが好きだとわかる部分

③うずのしゅげの花の(夢のように静かに語る)会話を、語り手が聴いている部分

④2か月後、うずのしゅげの銀毛の房がばらばらになって飛んでいくのを、語り手が見ている部分

⑤語り手が、自分の考えたことを語る部分

①〜⑤のそれぞれに、印象的なシーンがたくさんありますよね(^^♪
例えば②だと…語り手が蟻と会話するシーン。語り手はしゃがみ込んで、蟻に顔を近づけているのでしょう。その表情はあたたかですね。蟻が頭を傾げたり、キラキラと瞳を輝かせたりするのも想像してみてくださいね。会話をしている最中は二人(一人と一匹)にスポットライトが当たっている状態で、私たち読者は、スポットライトの中にいる二人(一人と一匹)それぞれの表情に注目させられますが、その前後では、語り手や蟻と一緒に日差しや微風、土の湿度も感じられるといいですね〜✨
山男のシーンも素敵です。この続きは次回に…

2022年1月19日水曜日

ありがとうございます✨文学賞味会にご参加くださる皆さまへ✨

 文学賞味会にご参加のお申し込みをいただき誠にありがとうございます!ご参加くださる皆さまと、今回も共有しておきたい《文学作品の朗読》。

【朗読劇】ではなくて、【朗読】です✨

文学作品は、上演台本ではありませんものね(^^)
〈音声〉を聴くにとどまらず、聴くというかたちの〈読書〉をご一緒くださいね。語っているのは朗読者の私ではなく《語り手》です。私の声は、語り手が語る文字言語をアシストするにすぎません。ですから、『おきなぐさ』を前もってお読みくださいね。お読みくださればお読みくださるほど、親しみを深めておいてくださるほど、文学賞味会を楽しめます!!ほんとです!!!

青空文庫でも読めます。角川文庫『銀河鉄道の夜』、新潮文庫『注文の多い料理店』にも収録されています。手書きの原稿でよろしければ(乱筆お恥ずかしいですが💦)ご用意します。ご遠慮なくおっしゃってくださいますように。

2022年1月14日金曜日

言葉とじっくり向き合う時間✨

 活字が並ぶ、その向こうに空間がある!世界が広がっている!!朗読教室の皆さまとご一緒にワクワクしながら、芥川龍之介の『トロッコ』や、志賀直哉の『小僧の神様』を読み進めています。

語り手は〈どのような体験〉を〈読者〉に〈促して〉いるのか? 語り手自身がその体験をするにあたって、自らの五感をどのように働かせ、自らの身体をどのように使っているのか?

ていねいに観察することで、語り手が言葉を生み出す瞬間に立ち会うことができます。言葉の誕生に立ち会うことができます。そのとき、瑞々しい作品世界が眼前に広がります(^^♪

2022年1月10日月曜日

読めている…はず⁈

「名作といわれてるけど…たいした作品じゃなかった」
と思うときには、
「私、読めていないのかも?」
と疑ってみるのが賢明かもしれません(^^)

皆で取り組む朗読の場であらためて読んでみると、一人で読んでいた時には気づかなかった作品の凄さ・素晴らしさに出会えて嬉しくなることが多々あります。

「自分の読みたいように読んでいた」
ことがわかって愕然とすることもあるかもしれません。

くもりのない目で世界を見ることはなかなか大変ですね。くもった目で見ている可能性があると思える知性が大切なのでしょうね。
「ひょっとして私って自分の見たいように見てるのかも⁈」
朗読は、ときに自分のモノの見方のクセを教えてくれたりもします(^^♪

2022年1月6日木曜日

文学賞味会2022✨

 お変わりなくお元気にお過ごしでしょうか。

明日あたり、今年の文学賞味会のリーフレットが印刷されて届く予定です(^^♪
3月7日(月曜日)15時〜と18時〜。ご都合の良い回にご参加くださいね。

今回は、宮沢賢治の美しい作品『おきなぐさ』を皆さまとご一緒に味わいたいと思っています。この作品の語り手は、そのまま宮沢賢治のよう。岩手のおおらかな自然と繊細な生命を魅せてくれます。
私たち読者は、語り手のやわらかな語りによって徐々に日常から作品世界へと運ばれていきます。
そして語り手は、しごく当たり前に!蟻と話し始めます。蟻もほかの花たちも山男も皆、おきなぐさが大好き。そのことを読者と共有してから、いよいよおきなぐさ(うずのしゅげ)の花を私たちの心にイキイキと抱かせてくれる語り手を、ぜひご一緒に追体験しましょう♫

5/R ホールの心地よい空間を、私たちの〈想像力〉で〈蟻や花や鳥の言葉が聴こえるイーハトブ〉にできたなら…とてもとても幸せです(^^)

2022年1月1日土曜日

あけましておめでとうございます🎍

 あけましておめでとうございます✨
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

名古屋は良いお天気に恵まれました(^^♪

皆さまのご多幸とご健康をお祈りしています✨
楽しい発見に満ちた一年となりますように!!