2022年10月9日日曜日

森絵都さんの『こりす物語』【1】①〜④:朗読のための〈語り手〉理解

10月期は、森絵都さんの『こりす物語』を読んでいきます。児童文学のジャンルですが、いろいろ考えさせてくれる豊かな作品だと思って取り上げました。

大きく6つの章【1】〜【6】に分かれています。今日進んだのは【1】の形式段落④まで。次回KさまとMさまに朗読していただいたあと、⑤〜⑨へと読み進めてまいりましょう(^^)

【1】の冒頭で〈語り手〉は読者を森へと誘います。こりすの暮らす森です。〈語り手〉は、こりすがどれほどちいさいかを念入りに語ります。ですから私たち読者が、脳内に広がる作品世界で出会うのは、本当にちいさなこりす。「だいぶちがっていた」という〈語り手〉の語りが説得力を持ちますね。
②の「ものすごく大きくてりっぱ」「森の王さま」と発話するのはこりすですね。どのような表情から生まれる言葉なのか…こりすの表情をしっかりイメージしてください。もちろん野うさぎやシカの表情も。
〈語り手〉は、抽象化と具体化を繰り返して、③のこりすの発話を読者に聞かせます。こりすの表情が変化していくのが見えますか?こりすが「わたしの見ているもの」と語るとき、こりすの脳内には素晴らしいモノが見えているのでしょう。「じんじんするくらい」という発話は、どのような身体から生まれているのでしょう?私の中からは「じんじんするくらい」という言葉はなかなか出てきません。「じんじんするくらい、すてきな瞬間」って?!ワクワクしますね!
④の一行、「その素敵な瞬間を、どうか、みんなにも見てほしい。」は、こりすに言わせるのではなく〈語り手〉自身が語ります。なぜだろう?問いが生まれますね。ひょっとしたらこの「みんな」には、森の動物だけではなく私たち読者も含まれるのかしら…。こりすの願いは、じつは〈語り手〉の願い、〈語り手〉の向こうにいる作者の願いなのだろうな……

皆さまとご一緒する朗読教室で、〈語り手〉理解がどんどん深まっていきます。楽しくて、刺激的で、じんじんするくらい素敵な時空間に感謝です❣️さぁ、こりすちゃんの大冒険をドキドキしながら辿ってまいりましょう(^^♪

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