2017年9月23日土曜日

『文学賞味会2017』谷崎潤一郎「刺青」❶

美しさは〈人〉を〈人〉でないものにする力であり、
なによりもこの力を歓待する場所が〈芸術〉である。
というのが、谷崎潤一郎の生涯を貫く信念だったと
言われます。
谷崎と、「刺青」に登場する若い刺青師・清吉の姿と
が重なります。美しい女を創り出すのは芸術であり、
芸術の場であるから、麻酔で娘を眠らせても、勝手に
刺青をしても、それは歓待されることである………
この作品では、女郎蜘蛛を娘の背に彫りこむシーンは
全体の1割ほどにすぎません。語り手は、清吉の行為
を正当化するために、残りの紙面ほとんどを費やして
語ります。しぶといまでに語り倒した結果どうなるか。
果たして清吉が加害者なのか…朦朧としてくるのです。

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