2022年2月17日木曜日

理解する。受容する。

「私の解釈では…」と語り始めるのは、ある程度は理解できたと思えた後、もしくは理解しようと懸命に努めた後にいたしましょう(^^♪

語り手に寄り添いましたか?語り手を体験しようと努めましたか?

もっと寄り添えるのではありませんか?もっと体験できるのではありませんか?

そう自分自身に問いかける毎日です(^^)

2022年2月11日金曜日

宮沢賢治『おきなぐさ』

小説には、物語る[語り手]が必要です。通常、作者の創り出す[語り手]は[作者]と同一ではありませんが、宮沢賢治の『おきなぐさ』に関しては、語り手は作者の宮沢賢治だと思われてなりません。

この作品の主役は、二輪のうずのしゅげ(学名・おきなぐさ)です。彼らの姿には、ともに生きて、ともに心を震わせたであろう賢治と妹トシの姿が重なります。風に乗って旅立った彼らを一番近くで見送ったひばりも、きっと賢治の分身なのでしょう。そして、岩手の豊かな自然のなかで繰り広げられたこの繊細なドラマを見届け、さらに、うずのしゅげの魂に安住の場所を与えた語り手も、もちろん賢治。
彼はこの作品を創作することで、最愛の妹の死をようやく受け入れることができたのかもしれません。

『おきなぐさ』の読書体験は、身を裂かれるような悲痛な別れを、宝石のように輝き続ける美しい思い出に変えてくれると確信しています。例えば…正確な情報を読者にわかりやすく届けようと書かれた新聞の文章を読むときと同じように『おきなぐさ』を読んでいては、読書体験にはなりません。観察力や洞察力、想像力を使って作品理解に努めることで、読書はかけがえのない体験になります✨朗読教室ならびに文学賞味会で、『おきなぐさ』の読書をさらにダイナミックな体験にするお手伝いができたら幸せです。
言葉が創り出す豊かな世界をご一緒に愉しみましょう(^^♪

文学賞味会で宮沢賢治『おきなぐさ』の読書を楽しみましょう!

 文学作品を豊かに味わうための《文学賞味会》。

一人ではなかなかたどり着けない[深い作品理解]へと至る道のりは、文学博士の高田映介がご一緒します。宗川諭理夫の作曲・演奏による音楽と石田麻利子の朗読は、よりダイナミックな読書体験へとあなたを誘います。

一つ一つのシーンで、それぞれの景色が鮮やかに立ち現れる。登場人物たちが眼前で躍動する。彼らの繊細な心の動きが手にとるように伝わってくる。読書の感動を分かち合いましょう。

今年は、3月7日月曜日18時から千種の5/Rホールにて開催します(^^♪

2022年2月4日金曜日

宮沢賢治『おきなぐさ』 文学賞味会に向けて✨続き

小説の語り手は、読者に〈新たな体験〉を促してくれます。言葉だけで創り出される各シーンで、私たちは目撃体験を大いに楽しみましょう(^^♪

さて、「おきなぐさ」の山男シーン直前の語り手の発話「よろしい。さよなら。気をつけておいで。」の途中…さよならを言い終えた辺りで、語り手は、去って行く蟻を目で追いながら立ち上がり、無事を祈る声がけをしたのでしょう。蟻の進む方をしばし見ていた立ち姿の語り手は、ゆっくりと頭を回して、その目線の先を見るようにと読者に促してくれます。黒いひのきの森が、私たちにも見えてきました。上空からのカメラワークに切り替わることで空き地が見つかります。降りていくと、誰かいる。賢治の創り出すデクノボウ的存在・山男です。あたたかな陽射しを受けています。倒れた木にいつものようにリラックスして座っています。仕留めた鳥を食べようと手で引き裂いた、その状態でフリーズしている。山男の見ているものは何か?彼の眼玉が向いている方を見るよう語り手から促された私たち読者は、1本のうずのしゅげを発見できるのですね!うずのしゅげの花のアップから、最後はロングショットへと切り替わります。早春の光が差す、ひのきの木が周りを取り囲んでいる枯れ草の空き地に存在する[大柄などっしりとした山男]と[風にそよぐ可憐なうずのしゅげの花〕との対比が、このシーンをより印象に残るほのぼのとしたものにしてくれますね。山男の目も釘付けになるほど、うずのしゅげの花がかわいく魅力的なことを私たち読者は納得して、いよいよ始まるドラマの本編へと読み進めていくのですね(^^)

2022年2月1日火曜日

宮沢賢治『おきなぐさ』 文学賞味会に向けて✨

 前回のブログで、『おきなぐさ』の予習をお願いしました。『おきなぐさ』もですが、小説を読むときには、それぞれのシーンを、その場へ行って体験するつもりで読むと楽しいと思います✨
あらすじがわかればOKという読み方では、作品の楽しさ・面白さをじゅうぶんに味わえなくて…もったいないです(^^)

さて、『おきなぐさ』という作品を大きく分けると5つ。

①読者を、日常からあちらの世界に連れて行く導入部分

②花も蟻も山男もみんなうずのしゅげが好きだとわかる部分

③うずのしゅげの花の(夢のように静かに語る)会話を、語り手が聴いている部分

④2か月後、うずのしゅげの銀毛の房がばらばらになって飛んでいくのを、語り手が見ている部分

⑤語り手が、自分の考えたことを語る部分

①〜⑤のそれぞれに、印象的なシーンがたくさんありますよね(^^♪
例えば②だと…語り手が蟻と会話するシーン。語り手はしゃがみ込んで、蟻に顔を近づけているのでしょう。その表情はあたたかですね。蟻が頭を傾げたり、キラキラと瞳を輝かせたりするのも想像してみてくださいね。会話をしている最中は二人(一人と一匹)にスポットライトが当たっている状態で、私たち読者は、スポットライトの中にいる二人(一人と一匹)それぞれの表情に注目させられますが、その前後では、語り手や蟻と一緒に日差しや微風、土の湿度も感じられるといいですね〜✨
山男のシーンも素敵です。この続きは次回に…